第50回
【2025年度】カナダ・ケベック州研修
ケベック州では、医療・保健と福祉を一体的に提供する包括的な「保健・社会サービス制度」が構築されており、ライフコース全体を通じて子どもと家族を支える体制が整えられています 。特に、子どもの健全な発達には生活環境や養育関係が途切れないことが不可欠であるとする「stabilité(安定性)」の概念が、支援の中核に据えられています 。。
第50回研修では、子どもの権利擁護の先進的な実践を中心に、児童福祉政策の変遷、虐待等への予防的支援の現状と課題、および社会的養護のあり方を学び、日本の今後のあるべき方向性について議論しました 。
参加者は、研修団長1名(大学病院医師)、特別講師1名(弁護士)、および実務に携わる団員8名の計10名でした。団員の内訳は、児童養護施設から3名、児童自立支援施設から2名、児童心理治療施設から1名、児童家庭支援センターから2名でした。渡航研修8日間と帰国後のリモート研修1回を実施しました。
子どもの最善の利益を守る基盤としての「stabilité(安定性)」の法的保障
ケベック州保健・社会サービス省への視察では、同州の青少年保護法(LPJ)において、子どもの発達における「stabilité(安定性)」の確保が、法律の中核概念として位置づけられている点を学びました。これは、子どもの発達にとって、愛着関係のある養育者や住み慣れた地域社会、学校とのつながりが途切れることなく継続することを重視するものです。
この方針に基づき、行政は子どもが家庭から離れて保護される際も、可能な限り、もとのコミュニティとの継続性を維持し、「生活環境の継続性」を保障する仕組みを構築しています。また、支援の質を担保するためにエビデンスに基づくプログラムの実施が制度化されており、18歳で保護措置が終了した後も、自立に向けて最長25歳まで公的な伴走支援が継続される仕組みが整えられていました。
研修団は、子どもの安全を確保するだけでなく、生活環境や人間関係の連続性を権利として保障しようとする州政府の包括的な姿勢に感銘を受けました 。日本における社会的養護においても、子どもの心理的・物理的な環境の安定性をどのように制度として支えていくかという課題に対し、多くの示唆を得る機会となりました。
記事作成日:2026年4月
| 訪問州 | 視察先/講師 | |
|---|---|---|
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ケベック州 |
ケベック州保健・社会サービス省 |
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-予防・公衆衛生担当次官室 |
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-社会サービス・精神保健・再適応担当次官室 |
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-身体保健・医薬品担当次官室 母子保健局 |
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-青少年保護次官室 |
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ケベック州家族省 |
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ケベック州高等法院(モントリオール地区)家事部門 |
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ケベック州裁判所(モントリオール地区)青少年部門 |
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サン・ジュスティーヌ病院 |
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マリー・ヴァンサン財団 |
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メゾヌーヴ青少年グループホーム |
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モンテレジー・ユース・センター(青少年再適応支援センター) |
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DPJ 青少年財団 |
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ケベック州里親家庭・中間資源連盟 |
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エール・ウヴェルト・コート・ドゥ・ネージュ |
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ラブ・ケベック |
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Adriano Battista 氏 講義 |
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オンタリオ州 |
ミンワシン・ロッジ 先住民族女性サポートセンター |
※報告書に記された名称(日本語)や表現に準じて記載
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