第27回
【2000年度】カナダ研修
第27回研修は、カナダのケベック州とオンタリオ州で、下の2つのテーマを掲げて行いました。
(1)子どもに対する「親の責任と子育てに関する教育」など、親と子、学校、施設、コミュニティがネットワーク化された自助、共助、公助による自立支援教育を学ぶ
(2)同じ法律のもとでも運営方法が異なる英語系と仏語系の同種施設の差異を研究し、そこから海外の福祉政策を日本に導入する際の留意点やアレンジの重要性などを学ぶ
研修参加者は、児童養護施設職員5名と施設長1名、児童家庭支援センターセンター長1名、自立援助ホーム職員1名、母子生活支援施設職員1名、知的障害者施設職員1名、情緒障害児短期治療施設職員1名の11名で、自立援助ホームと児童家庭支援センターからは初めての参加でした。研修日程は14日間でした。
自助、共助、公助による自立支援教育
ケベック州モントリオールでは、「児童福祉制度における文化的配慮について」というテーマでソーシャルワーカー(SW)研修プログラムに関する講義を受けました。モントリオール島ではケベック州への移民の95%を受け入れ、住民の45%が移民で占められるまでになっていました。この移民の子どもたちが問題を起こしたとき、モントリオール島のSWは移民の文化背景を理解できず、子どもを施設に送ることが多くなりました。こうした事態に対処しようと作られたのがSW研修プログラムで、研修団は、子どもが文化の違う世界のなかで生きていくことをSWがどう調整するか、文化的な差のマネジメントをどうするかを学びました。(写真は、文化理解のモデル図)。
ケベック州のみならずカナダは多民族、多文化の国であり、そのために相手の文化を尊重し、自らの価値観を押しつけることなくかかわりを持つことが必要となります。報告書では、まず、現場で発生した困難な状況から課題点を洗い出してモデル化しプログラムを開発していく社会の推進力や、できたプログラムを積極的に導入する現場の柔軟性に驚嘆させられる、と述べています。そして、プログラムは、コミュニティや家族へのアプローチに関するノウハウ中心のプログラムではなく、多文化を包含する社会とコミュニティをシステムとして捉え、SWが現実の問題に対応していく方法を探る力をつけるためのプログラムであり、ワーカー個人の努力に負うところの多い業務において、ワーカーが直面した問題を組織全体の問題として共有し解決を図る考え方があるとして評価しています。
記事作成日:2021年3月
訪問州 | 訪問地 | 視察先 |
---|---|---|
ケベック州 | モントリオール | ケベック青少年センター協会 |
・ソーシャルワーカー研修プログラム 「児童福祉制度における文化的配慮について」 |
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ウエストマウント、ほか | バットショウ青少年家庭センター(英語サービス) | |
・ユーザー委員会(サービス利用者からの苦情処理のための当事者参加の委員会) | ||
・訪問:グループホーム・メゾヌーヴ | ||
・訪問:ドーバルキャンパス(閉鎖型施設、更生施設) | ||
モントリオール | モントリオール青少年センター(フランス語サービス) | |
・「1,2,3,GO!」のプログラム(3歳未満の子どもがいる家庭を支えるコミュニティの力を育成) | ||
・仕事探しのプログラム | ||
・訪問:モンサンアントワンヌキャンパス(触法少年保護施設)(職業訓練) | ||
ジョリエット | ジョリエット保健所「CLSC平等に生まれて元気で大きくなる」プログラム | |
ラノディエール青少年センター「コミュニティーにおける家族にどう対応するか」プログラム | ||
オンタリオ州 | トロント | 子ども家庭サービスアドボカシー事務所 |
・州省際諮問員会(IMPAC) | ||
・グリフィンセンター(コミュニティサポートネットワーク、一時保護、二重診断など) | ||
Pape青少年資源センター(PARC)(自立生活支援施設) |
コラム
海外研修の意味と意義
第27回研修団員 児童養護施設 みどり自由学園(三重)施設長 中野智行
研修に行った当時はまだ駆け出しの現場職員でした。右も左も分からぬまま、理事長から勧められて応募し、2回目の応募にして参加が決まり、心踊らせた日から既に20年が経とうとしています。全国から集まった児童福祉現場に働く仲間と、2週間にわたって同じ時間を共有できたことは一生の思い出です。
社会的養護を必要とする子どもたちには、児童虐待による親子分離と生い立ちの整理、児童のアセスメントが求められ、個々に応じた支援をすることが求められています。生活支援を行うために研修を通じて専門性を身につけ、各地で実践中の児童養護の仲間と交流し、自分たちの児童養護はこれでよいのかと切磋琢磨してきました。
カナダを訪れて気づいたことには、移民の国は多様性を認めた上に成り立つこと、権利擁護を重んじる土壌をつくること、代替養護における里親の活用などがありますが、これら日本が直面している課題は、20年前に実践されていました。海外研修で目の当たりにしたことは、今自分たちが取り組んでいる実践の中で、少し先の現実という事実であること。そういう知見、見聞は職員としての養育感にも大きく影響をあたえ、権利擁護ができない時に発生する権利侵害などの課題に対して、権利擁護に叶った養育のベースに改善し作りなおすことができたことも研修受講の成果ではないかと思います。
みどり自由学園は現場で子どもたちの生活支援に追われる職員に対して、数々の研修の機会を与えてくれ、専門性を身につけるために受講を奨励してくれます。自分たちの支援を見つめなおす時間を取るために海外研修への挑戦があるのかもしれません。今はコロナ禍にあって海外渡航は難しいので、オンライン研修や小さい単位での研修受講や輪読しながら機を窺いたいと思います。子どもたちの生活支援に大きくに寄与する人材を育てていく海外研修参加を勧めるため、継続して計画してほしいと願っています。
コラムを読む
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