第30回

【2004年度】カナダ研修

  • シェアする

  • ツイートする

  • LINEする

2003年、児童虐待防止法と児童福祉法が改正され、数年来検討されてきた新たな社会的養護のあり方が具現化されようとしていました。子ども一人ひとりの育ちを保障するため、児童福祉従事者は、地域住民や関係機関と協働を図り、新たなニーズに取り組む必要がありました。第30回研修は、「家族の重要性を尊重し、コミュニティをベースにしたより柔軟なサービスの強化」をテーマに、カナダブリティッシュ・コロンビア州で研修を行いました。主な研修内容は、2001年にカナダBC州が打ち出した「政府主導からコミュニティベースへの移行」を目指した児童福祉改革の背景と具体的な推進、政府と地方機関の協力体制と役割分担、子どもの権利養護の仕組み、被虐待児養護へのサービス、先住民へのサービスでした。

海外研修30回を記念し、研修団は、ほぼ全種にわたる児童福祉施設の中堅職員と里親で構成しました。研修参加者は、児童養護施設職員8名と施設長1名、乳児院職員1名、母子生活支援施設職員2名、児童自立支援施設職員2名、情緒障害児短期治療施設職員1名、自立援助ホーム職員1名、里親1名の17名でした 。研修日程は15日間でした。

家族の重要性を尊重し、コミュニティをベースにしたより柔軟なサービスの強化

ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)では、従来、州政府が中心となって児童福祉サービスを行ってきましたが、財政難により政府主導から民間主導の方針に移行し、サービスの軸足をコミュニティ、そして家族へと移しつつありました。3年前に政権が交代した際、福祉予算が23%削減され、児童福祉においては入所施設予算が大きくカットされたため、入所型のケアは一時保護と短期治療型入所施設以外はほとんどなくなり、里親によるケアの比重がますます大きくなっていました。BC州児童家庭行政機関である子ども家庭開発省の主な業務は子どもの保護と後見であり、子どもの治療や家族の支援は全面的に民間援助機関に委託していて、危険度の低いケースについては危機介入も民間機関に委託していました。

BC州には100以上の民間援助機関がありました。かつての施設は方向転換をし、多くの専門家を擁し、コミュニティベースで、個人カウンセリング、集団療法、家族カウンセリングなどの子どもや家族を対象とした治療を中心に、薬物依存の治療、性的虐待のカウンセリング、家庭訪問や市街巡回などのアウトリーチ型サービス、メンター(生活指導や心理的サポートを担う)が大家となる下宿事業といった小規模社会復帰サービスなど、在宅や地域で問題を解決するためのサービスを行っていました。また産前指導、親教室、栄養教室など母子保健分野の予防活動に取り組む機関も多く、福祉と保健の垣根がないサービスが特徴的でした。
(写真は、国際児童権利・開発研究所での講義の様子)。

記事作成日:2021年3月

訪問州 訪問地 視察先
ブリティッシュコロンビア州 ビクトリア BC州子ども家庭開発省
 ・子ども家庭開発サービス変革部
 ・先住民・移行サービス部
 ・州内サービス部
BC州子ども家庭サービス連合(FCFS)(民間サービス機関連合)
ビクトリア青少年院
バンクーバー 青少年アドボカシー事務所
ビクトリア オンブズマン事務所
国際児童権利・開発研究所(ビクトリア大学)
バンクーバー バンクーバー先住民子ども家庭サービス協会 (VACFSS)
バーナビー BC州里親協会連合(BCFFPA)
バンクーバー コベナントハウスバンクーバー(ユースの緊急シェルター、自活プログラム)
子ども財団(家庭・コミュニティ支援)
大バンクーバーファミリーサービス(研修内容:家庭内暴力、青少年の健全な人間関係構築、ギャンブル依存、母子の絆づくりなどに係るプログラム、近親相姦と性虐待センター)
ケローナ オカナガンファミリーソサエティー(乳幼児健全育成、家族カウンセリング、青少年の乱用治療施設と入所施設、里親支援、青少年育成)
アークプログラム株式会社(ハイリスクの青少年の入所と在宅による治療的支援、地域支援)
オカナガンボーイズアンドガールズクラブ(発育、青少年支援、ハイリスクの親などに係るプログラム)


※報告書に記された順番、名称や表現に準じて記載

第30回 資生堂児童福祉海外研修報告書

2004年30回

第30回 資生堂児童福祉海外研修報告書

  • シェアする

  • ツイートする

  • LINEする

一覧へ戻る

トップ戻る