第22回

【1995年度】フィンランド、オランダ研修

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第22回研修では、「子どもの最善の利益を考える」をテーマに、スウェーデンに次ぎ世界で2番目に子どもの体罰法を制定したフィンランドと、北欧諸国と肩を並べる福祉先進国のオランダで、子どもの権利擁護に対する理念、施設における子どもの権利擁護、子どもの虐待・ネグレクトと児童保護制度、地域における家庭養育機能支援体制について学びました。研修参加者は、養護施設職員5名と施設長1名、母子寮職員1名、乳児院職員1名、教護院職員1名、情緒障害児短期治療施設職員1名、厚生省課長補佐1名の11名で、日程は14日間でした。

子どもの最善の利益を考える

フィンランドの公的社会福祉制度は成熟期に入っており、公的サービスを補完するボランティア活動も活発に展開されていました。「子どもは家庭で育てる」を基本的な考えとして、子どもが生まれる前からの親への育児指導、乳幼児期の親子関係を築く支援、学童期から思春期の間に起こる問題や悩みへの対応と、切れ目なく家庭と子どもを支援するプログラムが用意されていました。支援プログラムは、問題が起こる前の予防的プログラム、問題が起きた時の在宅援助プログラム、家庭の問題を解決するためにやむを得ず子どもを保護するプログラムの3段階で展開していました。施設入所については長期入所処遇から短期入所処遇へと方針が変わってきており、入所中も親とのかかわりが絶たれないように配慮がなされていました。若年の親には、出産前から行政のソーシャルワーカー、本人、施設のソーシャルワーカーの三者で面接を重ねて生活計画をたて、夫婦で入所ができる家族ぐるみの予防的ケアもありました。(写真はフィンランドで視察したケラヴァ少年刑務所の居室)。

オランダも、予防的ケアを基本とした児童福祉が展開されていました。施設入所については、以前は家族から切り離してできるだけ遠くの施設に措置していましたが、地域社会や家族との断絶が子どもの社会復帰に与える影響があるとして、措置には地域や家族とのかかわりが維持できるよう配慮し、入所期間も短期間となるよう支援していました。緊急に子どもを家族から引き離して施設に措置した場合であっても家族へのケアを行い、子どもが精神的に安定してきたら様子を見ながら家族関係を調整するなどしていました。心理治療を必要とする子どもの短期入所と通所指導、親や教師への子育て指導を行う医療養護施設De Schelp Medisch Kinder huis(スカルフ医療子どもの家)の視察は、日本でも子どもを取り巻く問題が日増しに複雑化する中で治療施設は重要度を増しており、学ぶべき点が多くあったと報告書には記されています。

記事作成日:2021年3月

訪問国 訪問地 視察先
フィンランド ヘルシンキ Central Union for Child Welfare(子どもを守る中央協議会)
Mannerheim League for Child Welfare(児童福祉連盟、子どもの電話相談、子どものためのオンブズマンなど)
Sofie Mannerheim Day Care Center(保育園)
ヴァンター Child Psychiatric Clinic of the Paijas-Rekola Hospital(市営の児童の精神治療病院)
Finnish Red Cross Shelter for Children and Young People(フィンランド赤十字児童少年保護施設)
Korso Child Guidance Family Counselling Center(市営の児童・家庭相談所)
シウンティオ Karskog Family Home(民間の職業里親施設)
ヌンメラ Vuorela Community Home(州立教護院)
ヴァンター Tammirinne Reception Home(市営の児童アセスメント及び短期措置施設)
ケラヴァ Juvenile Prison Kerava(少年刑務所)
ヘルシンキ Helsinki Mother and Child Home(NGOの母子寮)
Oulan Ylan Ensikoti(麻薬中毒・アルコール依存・AIDSキャリア等の妊婦の母子寮)(講義)
オランダ レリーシュタット De Schelp Medisch Kinderhuis(医療養護施設)
里親、里親指導員による講義
ハーグ Bernard van Leer Foundation(0~8歳の子どもに焦点をあて各国に援助を行う)
レリーシュタット De Schelp Boschhuis Foundation(養護施設、医療治療、デイケア、予防対策)
ハーグ Dutch Society against Child Abuse(VKM)(オランダ子ども虐待防止協会)


※報告書に記された順番、名称や表現にほぼ準じて記載

第22回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

1995年22回

第22回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

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