第16回

【1989年度】オーストラリア研修

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核家族化や地域における交流の稀薄化など、社会生活環境が変わりつつあるなか、児童福祉施設においては、家庭支援とともに、施設と地域社会との結び付きが重要な課題として認識され、本格的な取り組みが始まっていました。その新たな指針を探るため、第16回研修は各種児童福祉施設の指導的立場にある職員を対象に「児童福祉施設と地域社会との関わり方について」をテーマとした研修を、オーストラリアで行い、処遇実態と対策、制度、施設児童と地域社会との交流活動、施設の社会性と家庭指導の進め方などを学びました。参加者は養護施設職員8名と施設長2名、教護院職員3名、乳児院職員1名、母子寮職員1名、厚生省課長補佐 1名の合計16名、研修日程は16日間でした。

児童福祉施設と地域社会との関わり方について

オーストラリアでは、1960年代から70年代にかけて、大型施設への収容に対する反対の機運が高まって脱施設化が進み、要養護児童のサポートは、施設処遇から家庭的な雰囲気のコテージ・ハウスやグループ・ホームにシフトし、さらに里親制度が導入され、研修を行った1989年には子どもと子どもの家族に対する多角的サポートへとサービスのポイントが変化していました。ビクトリア州政府では、子どもと家族をいっしょにサポートすることで問題の発生予防の効果が得られるとして、州立の大規模施設を全て閉鎖するかわり、地域に「短期保護施設」を設置し、子どもへのケア、親の教育、在宅ケアを行う計画を進めていました。

研修団が視察した各施設は閉鎖や閉鎖を目前にしている状態で、子どもたちは地域社会の中に分散して生活をしながら地域の学校に通っていました。要養護児童の大半が里親委託で、長期滞在型入居制のホーム(コテージ)に入っているのは里親のところで不調があったケースや比較的年齢が高い子どもたちでした。どの施設でも子どもを一人の人間として捉え、非行のある者も障害のある者も、普通の家で、プライバシーが守られ、地域社会に融合した普通の生活をしている様子を見ました。(写真はDalmar Child & Family Careのグループホームの居室)。「施設としての地域との交流活動」の姿は見られませんでしたが、地域を拠点にしたセンターとしての施設の役割は重要さを増していました。St. John's Homes for Boys & Girlsでは脱施設化の最終目標は予防であるとして、地域の人々の生活の向上、危機的状況にある家族への援助、子どもの健全育成のための環境確保を実現するためのサービス開発を行っていました。

記事作成日:2021年3月

訪問州 訪問地 視察先
ビクトリア州 メルボルンほか Community Services Victoria(ビクトリア州地域福祉省)
Allambie Reception Centre(相談センター)
Noble Park Short-Term Unit(短期入居制ホーム)
St. John's Homes for Boys & Girls
Clark Cottage
Read Cottage
St.Martin's Hostel
Care-Force North Eastern(予防対策機関)
Care-Force Foster Care Outer Eastern(予防対策機関)
Berry Streen Child & Family Care(ファミリーグループホーム)
Kildonan Homes for Children(小規模グループホーム)
Victorian Children's Aids Society(児童援助会)
南オーストラリア州 アデレードほか Intellectually Disabled Services Council Inc.(知能障害児救護相談所)
Anglican Community Services Child Care Division(地域サービス児童部)
St.Joseph's Centre for Unmarried Mother(未婚の母教育センター)
Emergency Foster Care Centre(緊急里親センター)
South Australia Youth Training Centre(青少年訓練センター)
Department of Community Welfare(南オーストラリア州地域福祉省)
ニューサウスウェールズ州 シドニーほか Dalmar Child & Family Care(児童・家庭援助センター)
St.Vincent's Adolescent Unit(高齢児ホーム)


※報告書に記された名称・表現で記載

第16回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

1989年16回

第16回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

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