第14回

【1987年度】アメリカ研修

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いじめや登校拒否、非行の多発など、当時の日本の子どもをめぐる問題は、要養護児童が抱える課題に影響を及ぼしており、こうした子どもを支援する職員の専門的知識と処遇技術の向上が強く求められていました。第14回研修では、養護施設職員10名と施設長1名、教護院職員4名、厚生省課長補佐1名の16名が、14日間の日程で、アメリカで8ヵ所の視察を行い、非行児童の家庭環境と社会的背景、児童養護の実際、非行児童を収容する施設などにおける児童処遇を学びました。

非行傾向を示す児童の処遇問題

1985年の統計によれば、アメリカでは約100万人の青少年が非行を原因に保護され、うち5万人が施設に入所していました。当時のアメリカでは、青少年による暴力犯罪が深刻な問題とされており、行政においても対応策に苦慮している状況でした。施設に入所した青少年にはさまざまな治療プログラムが実施されているものの実効性は上がらず、施設退所者の70%が再び犯罪を犯していました。これについては、地域でのアフターケアに問題があると指摘されており、その対応として、親への指導や自立のための技術指導等を重点的に実施するようになっていました。

視察ではその実践を視察することができました。ニューヨーク州では、非行の程度によって、自宅またはグループホームでの保護指導と、施設(教護院)入所による保護指導に大別できる施策をとっていました。施設には、一定の制限のもと自由を拘束する施設と厳しい制限を課す施設があり、たとえばBerkshire Farm Center & Service for Youthは前者で、コテージと呼ばれる開放的な小舎制施設でした。ここでは、コテージ内のことは入所者の合意によって決定することを大事にしていました。また施設としてコミュニティサービスに力を入れており、専任のソーシャルワーカーを州内7か所のオフィスに配置し、裁判で有罪となった少年とその家族に対して、在宅で集中的に指導とカウンセリングを行うなどの予防活動を行っていました。(写真は治療システムを図にしたもの)。Goshen Service Centerは、施設の周りに金網の柵があって厳重なセキュリティが外からもうかがえる厳しい制限を課す施設で、重い罪を犯した少年が24時間監視下に置かれて生活をしていました。少年たちの地域社会への復帰を目指し、学校教育、職業指導、家庭環境改善のための家族への指導、退所後のアフターケアに取り組んでいました。入所予定期間の2/3が経過すると、州のアフターケアスタッフと施設スタッフが連携してカウンセリングや仕事のあっせんなどを行い、自立更生を支援していました。

記事作成日:2021年3月

訪問州 訪問地 視察先
ニューヨーク州 カナーン Berkshire Farm Center & Service for Youth(私立教護院)
ゴーシュン Goshen Service Center(州立少年院)
バージニア州 ラウドン Department of Social Services(ラウドン郡社会福祉局)
Foster Family Home(フォスターファミリーホーム)
アーリントン Deparment of Social Services(アーリントン郡社会福祉局)
Youth Shelter(郡立短期緊急一時保護施設)
ワシントンDC U.S. Department of Health and Human Services(連邦政府厚生省)
U.S. Department of Justice(連邦政府法務省)


※報告書に記された名称・表現で記載

第14回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

1987年14回

第14回 資生堂児童福祉海外研修団報告書

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