第11回
【1984年度】オーストラリア研修
日本では社会福祉の制度改革が進められ、福祉施策は在宅ケアや地方化の方向へ移行しつつありました。全国社会福祉協議会に「今後の養護施設のあり方検討会」が設けられたこの年、施設長を補佐する主任クラスの養護施設職員10名と施設長1名、研究者1名、厚生省から1名、全社協から1名の14名が、15日間の日程で、オーストラリアで12ヵ所の視察を行い、施設の歴史を変革の歴史と評していた同国の児童福祉と社会的養護のその後の発展を確認しました。
児童養護のネットワークづくり
視察はビクトリア州とタスマニア州で行いました。ビクトリア州では、前オーストラリア研修(第9回)で視察したSt. John’sを再訪して、その経営内容、家族支援サービスであるケア・フォース、里親養育、障がい児を持つ家庭へのインターチェンジプログラム、青少年支援、グループホームなどの先進的な取り組みについてさらに詳しく学びました。タスマニア州では、小舎型養護施設と自立への過渡期にある青年アパートの運営や支援内容、地域の一般家庭によるプログラム、在宅サービスなどの民間機関による取り組み、市町村による児童保護、非行少年への支援や里親養護、乳幼児サービス、そして州政府と市町村及び民間機関の地域支援における位置づけなどを学びました。
St. John'sでは、住民のニーズは民間の方が察知しやすいが、民間が吸い上げたニーズを、地域問題としてどうきめ細やかにサービスに反映させていくかが課題としていました。ビクトリア州地域福祉省では、地域ごとの福祉ニーズに適切に対応するためローカルベースで社会資源開発を進めること、州行政と住民との間の距離を縮めること、行政体系が分化され過ぎているため保健と教育、福祉分野が連携することが必要だとして、1983年から行政改革を行っており、地域特性を生かしたサービスの実施主体を地域に移管する方向性を明らかにしていました。(写真は、St. John'sにおける施設機能の社会化を示した図)。
記事作成日:2021年3月
訪問州 | 訪問地 | 視察先 | |
---|---|---|---|
タスマニア州 | ホバートほか | Tasmania Department for Community Welfare(タスマニア州地域福祉省) | |
Clarendon Chindren's Home(園内グループホーム) | |||
St.David's Child Care Centre(保育所と学童保育の合併センター) | |||
Anglican Family Care Services Inc.(民間法人経営の青少年自立援助施設) | |||
Wybra Hall Institutional Accommodation for Boys and Girls(教護院) | |||
Ashley Boy's Home(州立矯正施設) | |||
Glenhaven Children's Homes Inc.(民間法人経営ファミリーグループホーム) | |||
Roland Boys Home(民間養護施設) | |||
Kennerley Chindren's Home(民間法人経営ファミリーグループホーム) | |||
Quindalup Day Training Centre(重度障害児通所施設) | |||
ビクトリア州 | メルボルンほか | Victoria Department of Community Welfare Service(ビクトリア州地域福祉省) | |
St.John's Home for Boys and Girls(民間法人の児童福祉団体) |
※報告書に記された名称・表現で記載
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