第9回
【1981年度】オーストラリア研修
養護施設職員13名と施設長1名、厚生省厚生技官1名、大学教授1名の16名が、14日間の日程で、オーストラリア視察研修を行い、分散小舎制の運営形態、施設活動、処遇技術等についての史的展開と現況を中心に調査しました。
分散小舎制の運営、地域社会関係
オーストラリアの児童福祉サービスの基本的考え方は、社会生活の基礎単位として家庭を最重視するもので、家庭の機能を補完するための支援として位置づけた家族援助を、サービス全体の中心に据えていました。
訪問したビクトリア州では、できるだけ家庭に近い条件で子どもを養育すべく、集合型施設養護と言われた学校併設の大規模施設から、地域分散型の小舎養護であるファミリー・グループ・ホーム(以下、FGH)への移行が進んでいました。また、子どもを分離せずにすむようにしたいとう考えから、コミュニティセンターやケア・フォース(Care-Force)などで、育児や家事の講習会や、家庭相談、親の失業によるローン返済延期申請の手伝いなども含めた家庭支援サービスが提供されていました。(写真は、St.John'sのケア・フォースの看板)。
研修では、FGHとユースホステルなどの施設を経営し、里親、ケアフォース、エスニックケアフォースなどの家族サービス事業を展開する民間児童福祉団体St. John’s(ビクトリア州)での体験実習を含んだ研修に重点をおき、そのサービス体系、施設の最低基準や財務管理、職員体制、子どもへの支援や生活の状況について学びました。視察を通し、日本でも施設の社会化が望まれ、「コミュニティケア」「在宅福祉サービス」の必要性が叫ばれているものの、福祉行政の歩みは遅く、児童憲章や児童福祉法で述べられている「福祉の精神」の法的な実効性の低さから、その精神が「絵に描いた餅」に終止しているのではないか、また民間福祉施設としての独自性や開拓精神が、措置費や児童福祉最底基準の枠組みのなかに籠ってしまっていないか、と問題提起をしていました。
記事作成日:2021年3月
訪問州 | 訪問地 | 視察先 | |
---|---|---|---|
ビクトリア州 | メルボルンほか | St. John’s homes for Boys & Girls(養護施設) | |
Birch Cottage(収容児童養護部門) | |||
Wilson Units(収容児童養護部門) | |||
Broadhurst Hostels(収容児童養護部門) | |||
Care-Force: North Eastern Region(予防的福祉活動部門) | |||
St. Vincent's Boy's Home(男子児童養護施設) | |||
Allambie Reception Centre(州立一時保護所) | |||
キャンベラ | Koomarri Special School & Hostel(発達遅滞児の養護学校とホステル) | ||
Richmond Fellowship Youth Hostel(非行青少年を対象とするホステル) | |||
Woden Community Centre(時間保育) | |||
ニューサウスウェールズ州 | シドニー | Marymead Children's Centre(小舎制施設、緊急アコモデーション) | |
Arndell Children's Unit(州立情緒障害児収容治療施設) | |||
Karingal Dr.Barnard's in Australia(情緒障害児短期治療施設) | |||
Marcy Family Life Centre(コミュニティー・センター) |
※報告書に記された名称・表現で記載
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