第5回

【1976年度】アメリカ・メキシコ研修

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乳児院の職員15名と院長1名からなる乳児院班と、虚弱児施設(1997年児童養護施設に統合)の職員8名からなる虚弱児施設班の2つのグループ構成で、乳児院班は「地域ぐるみの子育てと里親制度」を、虚弱児施設班は「児童の処遇」をテーマに、26日間をかけ、アメリカ(7州)とメキシコで、合計21ヵ所の視察を行いました。

乳児院班 テーマ:地域ぐるみの子育てと里親制度

乳児院班は、住民組織に支えられた包括的な児童福祉サービスのあり方、里親制度などをポイントとして研修に臨みました。

1909年、ホワイトハウスで行われた第1回全米児童福祉会議で、ルーズベルト宣言が発せられました。その内容は、「家庭は文明で最も優れた産物」であり、「やむを得ない事情で、子どもが家庭生活を続けることができなくなる場合には、子どもの実家庭に最も似た環境で育成されるべきである」というものでした。この宣言を根拠とし、アメリカでは、在宅保護を原則として、困難な事情にある場合に限り子どもを里親に委託し、里親委託では満たされないニーズがある場合にのみ子どもを施設に措置する要養護児童施策が採られていました。要養護児童の措置先の比率は、里親委託が8割、施設入所が2割で、施設入所児童が9.5割を占めていた日本とは対照的でした。報告書ではこの点について、日米の施策の優劣を論じるよりも、アメリカには子育てに対する地域ぐるみの連帯感があるが、日本では家庭で生活できない子どもの養育を家庭や地域とあまりかかわりのないところで行っており、そのことで実親への働きかけや予防的アプローチが乏しくなっていないかを問い直すべきではないかと指摘していました。 (写真は、メキシコ唯一の国立児童福祉機関である乳幼児養護施設)。

虚弱児施設班 テーマ:児童の処遇

虚弱児施設班は、施設の運営主体や予算、施設設備、社会福祉に対する考え方、スタッフの構成と専門性、処遇の実際、地域社会との結びつきなどを研修のポイントとしました。

処遇について報告書で強調されていたのは、一人ひとりの子どものニーズを捉えて目標を設定し、具体的な治療方法を考える徹底した個別指導がなされていたことでした。また、ソーシャルワーカーが介在して親とともに子どもの治療を行っていく姿勢がみられたこと、法律面や医療面などの関係機関との連携体制を整備して軽度の障がい児を里親に委託していたこと、通所の相談部門が地域社会センターとしての役割を果たしていたことなどから、施設が地域社会によく開かれていると評価していました。さらに人員体制については、少数の子どもを多くの職員でみており職員の対応にゆとりと自信が感じられたこと、言語療法士、作業療法士、理学療法士、そして修士課程を終えた看護師が医師と同じ立場で協働して専門性を発揮していたこと、修士課程を終え2~3年実務を経験して資格を得たソーシャルワーカーが活躍していたことに研修団は注目していました。

新しい制度として、子どもが社会復帰をするまで生活する「グループホーム」、2組の夫婦が交代で少人数の子どもを養育する「フォスターホーム」が紹介されました。
(写真は、Children's Hospital(ニューオリンズ)子どもに手術の処置について伝えるための塗り絵)。

記事作成日:2021年3月

訪問国 訪問地 視察先
アメリカ カリフォルニア州
サンフランシスコ
ゴールデンゲート幼稚園協会
(フェーブA. ハースト就学前学習センター)
ルイズM. ランバードスクール(障害児通所施設)
カリフォルニア州
サンマテオ
Cumberlow Lodge(国立女子短期教護院)
コロラド州
デンバー
国民喘息センター
エクセルジア青年センター(ヌービルセンター)(女子更生施設)
コロラド州
ボルダー
シャーレン・ルーエー重症障害児養護施設
マサチューセッツ州
ボストン
ソロモン・カーター・フラー博士精神衛生センター
小児病院医療センター
マサチューセッツ精神衛生センター
マサチューセッツ州
ブライトン
ジョセフP. ケネディー・ジュニア記念小児病院
ニューヨーク州
ニューヨーク
スペンス・チャピン家庭児童センター(里親あっせん機関)
オハイオ州
コロンバス
州立大学病院ドッドホール・リハビリ施設
オハイオ州
グローブシティ
フランクリン郡児童福祉委員会施設
ルイジアナ州
ニューオリンズ
小児病院医療センター
ベル・シャス・スクール(障害児施設)
GNO知能障害市民協会(ビリー・パーデル・スクール)
メキシコ メキシコ連邦区 メキシコ児童援護協会揺りかごの家(乳幼児養護施設)
メキシコ児童援護協会家庭の家(女児養護施設)
アメリカ ハワイ州
ヒロ
ヒロ・ケアセンター(老人養護ホーム及び有料老人ホーム)
ハワイ州
ホノルル
パラマ隣保館
カウイケオラニ小児病院


※おおよそ訪問順に、報告書に記された名称・表現で記載

第5回 アメリカ・メキシコ社会福祉研修団報告書

1976年5回

第5回 アメリカ・メキシコ社会福祉研修団報告書

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