第3回
【1974年度】ヨーロッパ研修
養護施設の職員20名、厚生省課長、養護施設の施設長及び教諭からなる23名が、22日間をかけて、ヨーロッパ6ヵ国で、児童福祉を中心とした社会福祉に対する理念や思想、歴史、制度、施策、援助の実際、人材育成、職員の専門性などを学ぶ視察を行いました。
海外福祉事情視察
当時のヨーロッパでは、高齢化、家庭崩壊と夫の蒸発(報告書での表現をそのまま使用)、未婚の母の増加、アフリカ諸国やインドなどからの季節労働者と移民の増加とそれに伴う要保護児童の増加、既婚女性の社会進出と保育所の整備、少年の薬物使用と非行などが問題となっており、対策は講じられていても根本的解決のためには時間と財源を要するであろうことが明らかでした。こうしたなか、ヨーロッパの児童福祉においては、家庭支援の重要性が認識され始めており、研修では、家庭や結婚生活に対する家族への助言や支援が「予防的児童福祉」として機能することを学びました。
要養護児童の支援においては、児童を家庭に戻すことを最優先とし、次善の策として養子縁組か里親、あるいは施設が位置づけられていたことが、どこの国でもおおむね共通した方針でした。施設入所中の子どもに対しては、家庭的処遇に近づけることに努めるとともに、週末にはなるべく家に帰し、親子間の調整や連帯感を強くする指導がなされていました。これは報告書では、子どもが成人して家庭を持った時までを見通したうえでの支援であることが示されていました。
(写真は、見学した養護施設職員の研修の様子)
記事作成日:2021年3月
訪問国 | 訪問地 | 視察先 | |
---|---|---|---|
スウェーデン | ストックホルム | ストックホルム市社会福祉局 | |
スウェーデン・キリスト教社会福祉教会 (通称ストラ・ションダール) |
|||
クンス・ホルムス保育園 | |||
イギリス | ロンドン | 大ロンドン市ワンズワース区児童福祉部:アールズフィールド・ハウスー時保護所、チューダー・ロッジー時保護所 | |
ナショナル・チルドレンズ・ホーム:レガード・ファミリー・センター(保育所付設の未婚母子ホーム) | |||
救済十字軍:子供の家伝導会 | |||
フランス | パリ | パリ市社会福祉局 | |
市立一時保護センター | |||
市立ロシュフコール看護婦学校 | |||
フランス国保健福祉省 | |||
スイス | チューリッヒ | 市立ハイツェンホルツ養護施設 (通称ゾルネスベルグ白亜館) |
|
バルグリスト大学付属病院整形外科 | |||
チューリッヒ市立教護院 | |||
トローゲン | ペスタロッチ子供村 | ||
ドイツ | シュツットガルト | シュツットガルト・ニコラウスフレゲ盲学院 | |
コルンタル・ホフマン・ハウス養護施設 | |||
フランクフルト | ビュルゲルマイスター・グラフ・ハウスー時保護所兼養護施設 | ||
デンマーク | コペンハーゲン | デンマーク国労働福祉省 | |
エ一ゲルントスフセット養護施設 | |||
ストーレマーゲルスティーエン保育園 | |||
ウルバンプラネン児童館 | |||
ストーレ・ヴュールスルーゴー児童福祉センター |
※報告書に記された名称・表現で記載
コラムを読む
- 里親制度を学んで 石井公子さん(第6回)
- 福祉の神髄とアメリカンスピリッツ 太田一平さん(第15回)
- 一人ひとりの子どもにふさわしい社会(今) 側垣一也さん(第18回)
- 海外の虐待対応の取り組みから 増沢高さん(第23回)
- カナダから学んだアドボカシー 都留和光さん(第26回)
- 海外研修の意義と意味 中野智行さん(第27回)
- 多民族国家でみた家族を支える支援 麻生信也さん(第29回)
- 米国の虐待防止活動と治療の研修から学んだこと 田中恵子さん(第35回)
- 施設と里親、施設と家族とのかかわり 山高京子さん(第37回)
- 罪を犯した少年や非行少年への支援 関根礼さん(第39回)
- アメリカのエビデンスベーストプログラムとその実践 野々村一也さん(第40回)
- 周産期の母子を支える児童虐待の予防的支援 山森美由紀さん(第42回)
- 日本における児童福祉用語の変遷について 川松亮さん(第43回)
- イギリス児童福祉における協働と連携 工藤真祐子さん(第44回)
- フランスの子ども虐待、児童保護の考え方としくみ 坂口泰司さん(第46回)
- 子どもの安全を守る 倉成祥子さん(第47回)