増沢 高 様子どもの虹情報研修センター センター長
第23回(1996年度) 養生堂児童福祉海外研修修了者(オーストラリア・ニュージーランド)
第37回(2011年度) 養生堂児童福祉海外研修特別講師(スウェーデン・デンマーク)
第44回(2018年度) 養生堂児童福祉海外研修特別講師(イギリス)
第47回(2022年度) 養生堂児童福祉海外研修特別講師(オーストラリア)
記事作成日:2026年2月
少子化、児童虐待、子どもの自殺、子どもの貧困、居場所のない若者の問題など、近年子どもに関する様々な問題が取り上げられるようになりました。日本の未来を支える子どもたちのこうした問題は、日本全体の行方を左右する深刻な問題と認識する必要があります。またこれらの問題は日本だけにとどまらず世界中の重大問題であり、多くの国が解決に向けて取り組んでいるところです。
日本の子どもたちの問題を解決するために、世界の取り組みから学ぶことは重要です。ゆえに海外視察研修は、その国の取り組みを学ぶ重要かつ貴重な機会となるものです。海外視察は限られた期間とはいえ、先進的な取り組みをしている機関を厳選し、訪問し、レクチャーを受けます。そこで日本にない発想や成果に驚き、感銘する研修参加者はほとんどです。こうした取り組みを日本に取り入れたいと考えます。それは至極自然なことと思います。ただ海外の取り組みを取り入れる際には、留意しておくべき点がいくつかあります。
まず押さえておきたい重要な点は、どのような取り組みでも、その国の歴史、文化、法律、組織体制、財源などの基盤の上で展開されているということです。まずは、こうした基盤を十分に学び、理解し、日本との違いを整理した上でその実効性を検討することが大切です。
また、どのような取り組みでも万能なものは存在せず、適応対象の限界や副作用などの問題を必ず抱えています。視察先のレクチャーでは効果やメリットが語られる一方で、限界や問題点についてあまり語られないものです。大事なことは、その取り組みが行われるようになった背景、および実践の過程で直面した問題点や懸念等の理解にも努めることです。このことは日本が取り入れた後、同じ問題を後追いする過ちを防ぐことにつながります。
海外視察には、日本になかった知見や実践等を知り得る意義以上に、より大きな意義があります。それは今の日本の文化、法律、対応システム等を世界的な見地から捉え、見つめ直す機会になるということです。それは日本の足りないところに気づくという一方で、既存の日本の知恵や技術の価値に気づくことでもあります。当たり前にあったことが、海外に出てその価値を知るという側面です。こうした体験はさらに深く日本を理解し、洞察し、何が大切で何が足りないかを見極める眼差しを育みます。こうした力は将来の児童福祉を担うためには欠かせない要件といっていいでしょう。
今後も海外研修が、広い視野で日本をとらえ、多角的な視点から検討できる力を身に着ける機会となること、そして児童福祉のリーダーを養成する重要な資源であり続けることを期待します。