2010~2019【海外研修の歴史】

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予防的支援と社会的養護の今後を考える研修【社会的養護の課題と将来像と、社会的養育の新しいビジョン】

子どもと家族をめぐる時代背景

共働きの世帯は男女雇用均等法が成立した1985年の少し前から増加し続け、1997年以降は、共働き世帯数が、働く夫と専業主婦からなる世帯数を上回っています。内閣府の調査によれば、1979年、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に反対していた者の割合は男性で17.4%、女で22.8%でしたが、2014年には男性46.5%、女性51.6%と増加しました。夫の家事や育児への参画も増え、6歳未満の子どもを持つ共稼ぎ世帯の夫の育児・家事関連時間は、2016年、1日あたり84分で、2011年より14分伸びていました。しかし妻の育児・家事関連時間は2016年、1日当たり430分で、2011年から2分しか短縮していませんでした。また、2010年、育児・介護休業法が改正され、1.5%程度で推移していた父親の育児休業取得率は2017年、5.14%まで増加しますが、女性の83.2%とはまだ大きな開きがありました。「ワンオペ育児」という言葉に象徴されるように、家事や育児の負担がまだ女性に偏っている傾向がみられます。

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第37回研修 北欧で見かけたエコなイクメンと自由に参加できるオープン保育

少子化対策の一環で、政府は、2000年代から「待機児童ゼロ作戦」、「待機児童解消加速化プラン」などの施策を切れ目なく展開していますが、女性の就業率の継続的な上昇により保育の需要も増し、保育サービスの不足は解消されませんでした。2016年には「保育園落ちた日本死ね!!」という匿名のブロクが注目を集め、「保活」(子どもを保育園に入れるための活動)といった言葉も登場しました。

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第39回 フィンランドの育児パッケージ

また、2010年代も、児童虐待は大きな社会問題であり続けました。児童虐待対応の強化が法制化され、2011年には民法で親権が子どもの利益のために行われること、2016年には児童福祉法で子どもが権利の主体であることが明確化されました。また「しつけ」と称した重大な児童虐待事件の続発で、育児における暴力を許してはいけないという世論が高まったことや、体罰が子どもの成長や発達に与える悪影響が知られるようになり、2019年成立した児童虐待防止法と児童福祉法の改正法に「児童のしつけに際して、体罰を加えてはいけない」と明記されました。

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第38回 ロンドンヒリンドン区LSCB訪問

海外研修について

2010年代は児童福祉法と児童虐待防止法の改正が重ねられ、2011年と2017年に、それぞれ「社会的養護の課題と将来像」、「新しい社会的養育ビジョン」が発表されるなど、児童福祉と社会的養護のあり方の検討が進みました。

海外研修も、2000年代のような虐待に対応するケアワーク増強のための知識や技術、予防や治療の実用的なプログラムを学ぶ研修ではなく、介入から予防へとシフトしている欧米各国の子ども家庭福祉のあり方を俯瞰し、子どもの権利を保障するためのシステムとソーシャルワークについて考える研修へと変化しました。高福祉を実現する北欧、連帯や家族主義を志向する大陸ヨーロッパ、民主化前の影響が残る東欧、児童保護制度の修正や改革が進むイギリス、児童虐待の疫学的研究や防止と治療のためのエビデンスを蓄積し実践につなげるアメリカ、多様性と高い権利意識が特徴的なカナダで、それぞれの国や地域の特徴をとらえながら、日本での「予防的支援」「多機関協働」「里親と施設のパートナーシップ」「アドボカシー」などの具体的展開を探る研修を行いました。

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第44回 リーズ市LSC訪問
イギリスの子どもの安全を守る機関協働のしくみは委員会という会議体LSCBからパートナーシップLSPに変化していた

元号 年号 社会のできごと 子ども、女性、家族にかかわるできごとや事件
平成22年 2010 円高、ゼロ金利復活、記録的猛暑、日航経営破綻、大阪地検証拠改ざん 杉並里子虐待死事件、大阪2児餓死事件、「伊達直人」児童相談所にランドセル(タイガーマスク運動に)
平成23年 2011 東日本大震災、円高(75.32円)、反格差デモ世界に拡大、アラブの春、ウーサマ・ビン・ラ-ディン容疑者殺害 児童福祉法改正(児童相談所長、施設長の権限の規定など)、民法改正(親権が子どもの利益のために行われることが明確化、親権停止制度新設など)、「社会的養護の課題と将来像」とりまとめ
平成24年 2012 消費税増税法成立、景気後退局面、欧州債務危機続く、衆院選自由民主党圧勝政権交代、第2次安倍政権
平成25年 2013 アベノミクス始動、福島第一原発汚染水深刻化、TPP交渉に日本参加、中国PM2.5汚染深刻化 厚労省「子ども虐待対応の手引き」改正、警察がDV事案への積極介入体制確立(警察からの通告増加)
平成26年 2014 御嶽山噴火、広島土砂災害、集団的自衛権容認、7年ぶり円安株高、ノーベル平和賞にマララ・ユフスザイさん、イスラム国勢力拡大、香港民主化要求デモ雨傘運動
平成27年 2015 安全保障関連法成立、IS邦人人質殺害、TPP大筋合意、外国人観光客激増、爆買い、中東難民欧州に殺到、イスラム過激派世界各地でテロ 児童相談所全国共通ダイヤル「189」設置、虐待通告相談件数(児童相談所のみ)10万件超
平成28年 2016 熊本地震、米大統領広島訪問、日銀マイナス金利、障がい者施設19人殺害、トランプ大統領選勝利、英国EU離脱決定 児童福祉法等改正(児童福祉法の理念明確化、子どもが権利の主体であること、母子健康包括支援センター全国展開、市町村・児童相談所体制強化、里親委託推進など)
平成29年 2017 森友・加計・日報問題、共謀罪法成立、九州北部豪雨、電通に有罪働き方改革に機運 児童虐待防止法・児童福祉法改正(司法関与強化)、「新しい社会的養育ビジョン」とりまとめ
平成30年 2018 日産ゴーン会長逮捕、財務省森友文書改ざん、西日本豪雨・北海道地震災害相次ぐ、働き方改革外国人就労で関連法 目黒区5歳女児虐待死、児童虐待防止対策強化に向けた緊急総合対策、児童虐待防止対策体制総合強化プラン(虐待対応体制・専門性強化の計画策定)。
DV心理的虐待、警察等からの通告の増加
平成31年 2019 「令和」に改元、京都アニメーション放火、消費税10%、東日本台風大雨被害、首里城火災、中国武漢で新型コロナウィルス発見 千葉県野田市小4女児虐待死、児童福祉法改正(体罰禁止の法定化、児童相談所体制強化・設置促進、関係機関間連携強化など)、西日本こども研修センターあかし設立、緊急総合対策の更なる徹底・強化、児童虐待防止対策の抜本的強化、「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」発足、北海道札幌市2歳女児虐待死
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