第42回

2016年度
カナダ研修

第42回研修は、カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州(BC州)を訪問し、前年度のカナダ東部のオンタリオ研修からの知見も踏まえ、多様性を許容する連邦国家カナダの子ども家庭福祉の制度・政策の傾向と課題を学びました。 また2011年度よりヨーロッパと北米をめぐり、各国の児童福祉の歴史や理念、制度や政策、関連機関や施設の機能や役割、多機関協働、虐待対応と支援の実際、予防的支援、エビデンスに基づく実践などを学んできました。第42回研修も多角的、総合的観点から児童福祉の情勢を学ぶとともに周産期の予防的支援にも注目し、「乳幼児対応」「虐待予防支援」「人材育成」を中心的テーマに据え、視察を行いました。

研修参加者は、児童養護施設職員6名、乳児院職員1名、母子生活支援施設職員2名、児童自立支援施設職員1名、情緒障害児短期治療施設職員1名、児童家庭支援センター1名、大学病院医師1名の13名でした 。研修日程は13日間でした。

周産期の予防支援、乳幼児対応、虐待予防支援、人材育成

BC州における社会的養護の施策は、先住民の子ども福祉を中心に展開しました。それは最初の社会的養護の施設が1863年、キリスト教会によって開設された先住民の子どものためのレジデンシャルスクールであったことからもわかります。1981年、児童保護法が家族子どもサービス法として刷新され、家庭を離れてインケアになることを予防するための家族支援を拡大することが目指されました。先住民の子どもの福祉問題への反省と、社会的養護の視点の画期的な転換点が重なり合い、児童保護サービスにはケアの連続性を重視する理念が強調されました。BC州では、1984年に最後のレジデンシャルスクールが閉鎖され、1991年には先住民が子ども福祉の権限委譲と予算配分を受けることが決められました。1996年、国連の子どもの権利条約の影響を強く受けた「児童・家庭・コミュニティサービス法(CFCSA)」と養子縁組法によって、先住民による伝統的な養子縁組が認められるようになりました。子どもの育ちの過程で、親や家族、地域の文化から分離され、自分らしさの感覚を喪失することから生じる心理社会的な問題を踏まえ、BC州の児童保護サービスの根幹はFamily preservationとPermanency planに置かれ、子ども発達・家庭促進省(MCFD)が提供するサービスは、子どもや家族と協働的で分断しない、個を尊重し、子ども中心の視点で、家族の強みに注目するというポリシーを採っていました。子どもの権利を保護するため、家族の絆と形態の分断を最小限に留めることを目指し、子どもと協働するかたちで支援が展開されていました。
(写真は、BC州社会的養護当事者ネットワークでの当事者を囲んで行った研修の様子)。

訪問州 訪問地 視察先、講師
ブリティッシュ・コロンビア州(BC州) バンクーバー島ビクトリア BC州子ども発達・家庭促進省バンクーバー島地区事務所
Safe Baby Home(ハイニーズの乳幼児の里親ホーム)
ボーイズ&ガールズクラブ 地域の子どもの総合支援団体
(若年妊婦、子育て支援、少年司法プログラム)
バンクーバー島保健局、サーニッチ母子保健ユニット
BC州オンブズパーソン事務所(苦情受付・調査機関)
BC州子ども・若者代表(子どもの権利擁護機関)
バンクーバーとその近隣 バンクーバー先住民子ども家庭サービス協会
SOS子どもの村 ブリティッシュ・コロンビア
BC州里親会連合
BC州社会的養護当事者ネットワーク
Aunt Leah's Place(住宅支援・若年妊産婦支援団体)
リッチモンド病院 乳幼児精神保健プログラム
ブロードウェイ若者支援センター
コベナント・ハウス バンクーバー
(ホームレス少年のシェルター)
カナダ赤十字(暴力・いじめの予防教育プログラム)
エモン睦子氏
(ケベック州認定児童青年精神科医、医学博士)「ケベック州における乳幼児の精神保健と児童福祉について」

※報告書に記された順番、名称や表現に準じて記載

コラム

周産期の母子を支える児童虐待の予防的支援
 第42回研修団員 母子生活支援施設 MCハイツ平和(石川)
 基幹的職員兼母子支援員 山森美由紀

カナダブリティッシュ・コロンビア州(BC州)ビクトリア市及びバンクーバー市での研修から4年半経過した今でも、時折頭をよぎる印象的な言葉と場面があります。それは当事者に対して、支援者に求めることは何かと聞いた時のことで、まず「Non-judgemental!(評価、判断、非難をしないで!)」という言葉が返ってきてたこと、そして「明るいふるまいや励ましの言葉をかけるよりも、とにかくその人の話を聞いて」と言われたことです。核心を突かれてハッとさせられ、初心にかえったような想いになって目頭が熱くなりました。
また、BC州での望まない妊娠や出産に対する手厚い支援制度のなかでも、高校まで義務教育で授業料が無料であること、単位制のため在学時に妊娠、出産となったとしても復学して単位を取得すれば卒業ができるということ、そして既に28年前(当時)から保育園併設型高校が存在していたことに驚きつつ、感銘を受けました。社会からドロップアウトしないよう必要な時期にしっかり支援することで、教育の機会を保障し、安定した雇用にもつなげられる良い循環を生むシステムであり、日本でも実践的で柔軟な対応ができる高等教育の必要性を強く感じました。
さらにBC州では、主に先住民問題の当事者の権利擁護が重視されていました。当事者がその道の専門家として運営している団体では、当事者たちのこれまでの経験や知識に加え、最新の脳科学やエビデンスを活用して介入を行い、サービスの開発、アウトリーチ、地域ネットワークなどの取り組みを進めるなど、団体のオリジナリティあふれる、インフォーマルな活動が盛んでした。そういった活動家には共通して常に諦めずに取り組むという情熱と誠実さ、謙虚さを感じ、改めて支援するという仕事の意味を考え、常日頃から自分の姿勢や態度について振り返ったり、自分と向き合いながら仕事を進めたりすることの大切さを感じる機会となりました。
資生堂海外研修は究極の人材育成の機会だと思います。その機会を得られたことに深く感謝し、今後も、より多くの方に経験していただきたいと願っています。