第41回

2015年度
カナダ研修

カナダでは、子どもの権利が社会的に尊重され、権利保障のための法律やシステムの整備も進んでいます。第41回研修では、カナダを訪問し、「子どもが大人にもっとも近い国」とも言われるようになった社会的背景と歴史、子どもの権利擁護の現状と課題を学んだうえで、児童福祉と社会的養護についての考え方と制度、虐待予防と早期介入を目指した妊娠期から始まる子育て支援及び保育政策、虐待やメンタルヘルスの課題を抱える乳幼児への対応システム、里親と養子縁組に係る制度・政策を、具体的施策や地域でのサービスの展開と併せて学びました。

厚生労働省では、2015年4月より、幼児期の教育や保育、地域の子育て支援の質と量の拡充を目指した“子ども・子育て支援新制度”を本格スタートさせました。研修では、訪問地であるオンタリオ州の早期教育や社会的養護のもとにある子どもに対する教育支援の現場も視察し、社会的養護施設における子どものケアやその家族への支援の質的向上に加え、子どもと子育てをサポートするコミュニティづくりを進めるうえで施設が果たすべき役割について考えました。
研修参加者は、児童養護施設職員5名、乳児院職員1名、母子生活支援施設職員2名、児童自立支援施設職員1名、情緒障害児短期治療施設職員1名、児童家庭支援センター1名、児童相談所所長1名の12名でした 。研修日程は13日間でした。

子どもの権利、子育て支援と保育政策、
子育てをサポートするコミュニティ

1999年に導入された「トロント保育構想」には、「子どもの家族やコミュニティがどのような社会的経済的地位にあろうとも、全ての子どもたちに、健全で社会に適応し生産的な大人になるための発達を促進するような幼児期を過ごす権利がある」とありました。移民国家における“カナダ国民を作る”目的が垣間見られますが、この考えに則り早期教育サービスが行なわれていました。教育のシステムは、1982年の『カナダ権利と自由の憲章』の影響を受け、「公正」と「平等」と「inclusivity(包含)」をベースとし、さらに「子ども中心」という考え方を土台としていました。1960年代、社会的不平等や民族間の格差が問題となり、1971年のトルドー首相の多文化主義政策宣言によって多文化主義は国是とされ、徐々に浸透しており、カナダのインクルシブ教育は、移民の受け入れを一貫して続けてきた背景のもと必要性から生まれたものともいえました。

アドボカシーオフィスは、『Provincial Advocate for Children and Youth Act, 2007(子どもと若者のための州権利擁護法)』によって権限を与えられた、オンタリオ州の子どもの権利擁護を代表する機関でした。主には社会的養護の子どものための権利擁護を行っていましたが、精神障害や発達障害の子ども、障害児学校の子ども、特別級で特別な支援を受けている子ども、触法少年、先住民、措置中に死亡した子どもなど公的支援の周辺にいる子どもたちの権利擁護も担っていました。法律ではオフィスの義務が3つ、定められていました。1つ目は特別な必要性のある(先住民の子どもと若者も含めた)子どもと若者のパートナーとなり問題点を明らかにして直接その声を届けること、2つ目は子どもと家族とサービスを提供する者との間のコミュニケーションと理解を促進すること、3つ目は子どもや若者や彼らの養育者に対して子どもと若者の権利について教育することでした。最大の特徴と言えるのが、子どもの声が職員や大人からの制限を受けることなく州議会へ直接届けられるということでした。子どもの側に、そして時に家族の側に立ち、里親や福祉関連機関や行政に対して第三者的立場を保って、若者や家族や先住民の声を発信していました。
(写真は、CASトロント(トロント児童相談所)での講義の様子)。

訪問州 訪問地 視察先
オンタリオ州 トロント トロント市公共保健局(Healthy Babies Healthy Childrenプログラム)
オンタリオ州教育省
フレザーマスタード(幼稚園:早期教育)
ローズアベニュー(幼稚園:早期教育)
オンタリオ州子ども青年サービス省
CASトロント(児童保護対応機関)
ブースト 子どもと若者のための権利擁護センター
(アドボカシーセンター)
コバーグ トリートメント・フォスターケア・プログラム
トロント オンタリオ養子縁組支援機関
コベナント・ハウス
(ホームレスユースのシェルター・自立支援)
ブランプトン ロイ・マクマートリー少年院、
オンタリオ州ユースジャスティス
コバーグ コーナーストーン DV防止センター(シェルター)
トロント ゲートハウス性的虐待被害者への調査・支援施設
キッズ・ヘルプ・フォン
オンタリオ州アドボカシーオフィス
(子どもと若者の権利擁護機関)

※報告書に記された順番、名称や表現に準じて記載