第28回

2002年度
アメリカ研修

日本では児童虐待の問題が深刻化していました。“家族の養育機能の低下”が顕著になり、児童福祉施設では虐待を受けた子どもの入所の急増によって都市部を中心に定員がいっぱいになり、虐待を受けた子どもが入所児童の半数に達する施設も増えていました。第28回研修は、下の2つのテーマで、アメリカのカリフォルニア州、コロラド州、オレゴン州、ワシントン州で研修を行いました。
<研修テーマ>
(1)虐待家庭などに対する地域(コミュニティー)による支援、親に対する教育・訓練などについて学ぶ
(2)アメリカにおける最新の児童福祉施策、プログラムを研修すると同時に、里親制度の実態を学ぶ
研修参加者は、児童養護施設職員6名と施設長1名、情緒障害児短期治療施設職員1名、母子生活支援施設職員2名、児童自立支援施設職員1名の11名でした 。研修日程は14日間でした。

里親制度、被虐待児への対応

報告書の団長報告で、花崎みさを研修団長は、アメリカは州ごとで独立した考えをもって児童福祉を展開しているが、研修を通してみられた印象的な共通項があったとして次の点を挙げています。
1. 一人の子どもの生きる権利をどう守り育てるかにきちんと焦点を当てて対策が立てられている。
2. 子どもの精神的負担をできるだけ軽減し、家庭に近い環境を整えることに腐心している(実家族ケア、里親委託、一時保護所の廃止等)。
3. 一つのケースに、質の高い多くのソーシャルワーカーが継続的にかかわっている。
4. 裁判所が決定機関として厳然と存在し、その中でソーシャルワーカーが大きな働きをしている。つまり裁きと援助の役割分担がはっきりしている。
5. 地域の中に里親があり、官民共々に多くの支援体制が出来上がっている。
6. 州(市)の組織と民間の組織がしっかりと協働体制を組んでいる。
7. 予防にもすでに多くのシステムと実績を持つ。
これらアメリカ児童福祉の特徴についての具体的詳細は、予防プログラムを実施する施設、治療プログラムを実施する施設、里親に関する施設、公共機関と、視察先を機能別に整理しわかりやすく示した報告書で紹介しています。

研修テーマでもあった里親制度については、研修のまとめにおいて、ソーシャルワーカーによる里親トレーニングやアドバイスから、養育のアセスメント体制、里親のレスパイトサービスや里親同士のコミュニケーションの場の提供まで、里親の負担と孤独を軽減するような里親サポートがきめ細やかで、前年秋に開始された日本の里親制度を確かなものにするために参考となる、と記されています。(写真は、里親家庭への訪問の様子)。

訪問州 訪問地 視察先
カリフォルニア州 サンフランシスコ サンフランシスコ市ヒューマンサービス局
・児童保護センター(シェルター)
・ファミリーリソースセンター
コロラド州 デンバー デンバー市ヒューマンサービス局
・ヒューマンクライシスセンター
キトリッジ エバーグリーン愛着センター
(愛着障害児の治療を行うNPO)
オーロラ アダプション エクスチェンジ(養親を紹介するNPO)
デンバー デンバー児童裁判所
ケンプチルドレンズセンター
(児童虐待の予防から治療まで総合的に扱うNPO)
デンバー、その郊外 里親宅(訪問)ダーレン・モントーヤ家、テリー・ダル家、ドロシー・ブラック家
オレゴン州 セーレム オレゴン児童・家族委任機関
(児童・家族委員会、地域安全ネットワーク設置)
ヘルシースタートサービス(マリオン/ポーク支部)
ファミリー・ビルディング・ブロック保育園
(早期介入保育園)
ウッドバーン マクラーレン少年院
ワシントン州 タコマ メアリーブリッジ子ども病院と健康センター
(子育て支援の家庭訪問プログラム)
・子どもの代弁センター
(性的虐待を受けた子どもへのプログラム)
シアトル ケイシー・ファミリー・プログラムズ財団
(里親募集・養成、長期里親・養子縁組・実親家庭保護・自立移行のプログラム)

※報告書に記された順番、名称や表現に準じて記載