第25回

1998年度
アメリカ研修

児童福祉施設では、虐待の被害を受けた子どもや非行傾向のある子どもの入所が増加しており、児童一人ひとりに応じた心理面を含む相談援助が必要となっていました。第25回研修では、「アメリカの児童虐待の実態」をテーマに、アメリカワシントンDC、ニューヨーク、ボストン、ミネアポリスなどで多様な機関や団体を視察し、各都市の児童虐待の状況と対応策、養子縁組や里親を含む児童福祉制度、薬物依存や少年非行、貧困などの子どもをめぐる問題、児童福祉施設職員と子どもとの関わり方などを学びました。研修参加者は、児童養護施設職員5名と施設長1名、母子生活支援施設職員1名、乳児院職員1名、児童自立支援施設職員1名、情緒障害児短期治療施設職員1名、家庭裁判所調査官1名の11名で、日程は14日間でした。

アメリカの児童虐待の実態

アメリカは50の州から構成される連邦制国家であり、最高法規である合衆国憲法及び連邦法のもとで各州がそれぞれ独自の憲法と法律を持ち、婚姻・離婚・養子縁組等に関する制度が州ごとに異なります。国と訪問州の制度とその具体的サービスの展開を幅広くかつ詳細に視察した研修団の報告書では、アメリカの児童福祉政策の概要、児童虐待の実態と対応、視察先の詳細と要点、という3項目で研修内容を丁寧に整理し、最後に「研修をふりかえって」として学びを総括しています。

「研修を振り返って」では、アメリカの特徴として次のことが挙げられています。
・民間機関がリソースと活力、公的機関とのパートナーシップを擁し、質の高い多様な児童福祉サービスプログラムを開発、提供し、資金調達も積極的に行っていたこと
・施設やプログラムの提供場所には、医療関係者、心理職、職業指導者、教育関係者が配置され活躍していたこと。ソーシャルワーカーをはじめとした専門職は修士以上の学位を持ち、学生時代に研修生として長期間のトレーニングを受けていたこと。それぞれが専門職としてのプライドを持ち、ソーシャルワーカーがリーダーシップを発揮し、分業がスムーズになっていたこと
・貧困に起因する健康問題、人種差別や偏見による社会問題の解決のため、地域に飛び込んでサービスを提供する団体が存在し、困難があっても目の前にあるニーズにこたえようと取り組み、地域から大きな信頼を得ていたこと

アメリカから日本が学ぶべきことと課題として、パーマネンシープラン(分離をせずに親を支えるファミリープリザベーション、里親委託、養子縁組、治療を目的としたグループホームなどへの入居などからプランニングされる)の導入、ボランティアの育成、児童相談所の社会福祉士のさらなる専門性の向上が挙げられていました。
(写真はヘネピン郡児童裁判所の児童虐待事件の法廷レイアウト)。

訪問州 訪問地 視察先
コロンビア特別区(ワシントンD.C.) ヘネシー・澄子氏オリエンテーション
「アメリカの児童・青年福祉の組織」「連邦政府、州政府、私立施設のパートナーシップ」
アメリカ保健福祉省児童局
Children's Defense Fund Family Income(CDF)
(代弁機関)
米国議会見学
ミネソタ州 ミネアポリス ヘネピン郡児童家庭福祉部(社会福祉事務所)
ヘネピン郡児童裁判所
ペンシルベニア州 コンコードビル グレンミルズ教護学校
ニュージャージー州 ベルミード アーティスティック・リアライゼーション・テクノロジーズ
(重度身体障害児を対象とした絵画を通じた自己表現プログラム)
ニューヨーク州 ニューヨーク ユダヤ教家族・児童サービス
ホーソン ユダヤ教家族・児童サービス ホーソンセンター
(情緒障害児施設)
ヨンカーズ リーク・アンド・ワッツ・サービス
(里親・養子縁組、治療施設など幅広いサービスを提供する民間組織)
ニューヨーク ニュー・オルタナティブ・チルドレン(NAC)
(重度身体障害児の里親及び養子縁組サポート団体)
マサチューセッツ州 ボストン ソルジャーズ・オブ・ヘルス
(貧困地域のボランティア団体)
JRI-Health(青少年対象のHIV/AIDS予防及び治療のアウトリーチプログラム)
ミネソタ州 ミネアポリス セント・ジョセフ・ホーム・フォア・チルドレン
(緊急保護のシェルター、プレースメント待機所、治療施設、グループホームなど)
Community-University Health Care Center
(アジアからの難民や移民を対象にした医療サービス機関)
Centro Cultrual Chicano Inc.
(ラテン系移民などを対象にしたサービスセンター)

※報告書に記された順番、名称や表現に準じて記載