第21回

1994年度
アメリカ研修

多民族、多文化が併存する国家を存立させるためには、互いに民族性や文化を尊重し合うことが前提であるとして、第21回研修では、「子どもの権利と家族への支援について ~子どもの家族のウェルビーイングについて考える~」をテーマに、多民族から構成されるアメリカで、その進んだ人権意識を通して、子どもの権利と家族への支援について学ぶ研修を行いました。具体的な研修内容は、第20回カナダ研修を踏襲し、子どもの権利保護に対する理念、児童虐待とネグレクトと児童保護制度、ファミリーサービスについてとしました。研修参加者は、養護施設職員5名と施設長1名、母子寮職員1名、教護院職員2名、情緒障害児短期治療施設職員1名、心身障害児治療施設職員1名、知的障害児施設施設長代理1名の12名で、日程は15日間でした。

子どもの権利と家族への支援について 
~子どもと家族のウェルビーイングについて考える~

アメリカの児童福祉施策の基本的考え方は、子どもは家庭で養育されなければならないとする「家庭中心主義」でした。これは1960年代、「子どもを家庭で育てたい」「地域の子どもたちと一緒に学校に通わせたい」と願う知的障害児の親たちのノーマライゼイションと脱施設化運動に応じ、連邦及び州政府が地域で生活できる施策を制度化したところから始まったものでした。家庭中心主義の方策は従来の入所型福祉より成果が高く、費用的にも安くすむこともわかり、政策として確立しました。アメリカにおける子どもの権利保障は、児童福祉という単独の施策ではなく児童と家庭の福祉という総合施策で、「強い家族」を目標に、子どもの人権を確保し、子どもの養育環境を整備するためには親権停止も辞さない姿勢を備えた親や家族に対するサポートとして具現化していました。

研修団は、児童保護に関与する少年裁判所、ボーイズタウン(写真はその全景)における総合的な児童福祉事業、クライシスセンターにおける被虐待児の一時保護などについての研修を通し、子どもの権利擁護を図る工夫が凝らされた制度や、専門的な教育を受けたスタッフによる実践、高い権利意識の背景にある多民族国家としてのアメリカの姿とともに、児童虐待やネグレクト、薬物などの深刻な問題で子どもの権利が家庭と社会で危うくなっている側面があることも学びました。この年、日本は「子どもの権利条約」を批准しました。アメリカでは州によって法体系が異なり、個人の権利も各州の法律で保障されているため批准をしないとしていましたが、クリントン大統領は批准する考えがあることを発表したと報告書には記載されています。(2021年現在、批准していません)。

訪問州 訪問地 視察先
ペンシルバニア州 フィラデルフィア Philadelphia Department of Human Sercices
(福祉サービスを行う市行政機関)
ドイルズタウン Trinity Letheran Church, Child Care Center
(デイケア、放課後プログラム)
フィラデルフィア Tabor Children's Services Inc.
(デイケア、家庭保護(里親)・支援プログラム)
Sally Watson Center(デイケア、緊急保育所)
Please Touch Museum(子どものための遊びの博物館)
ネブラスカ州 オマハ Father Flanagan's Boys' Home
(ボーイズタウン。総合児童福祉施設)
Nebraska Department of Social Service Center
(ネブラスカ州社会福祉局)
コロラド州 デンバー Family Crisis Center(市の子どものための緊急避難所)
Governor's Mansion(州知事公邸)
(州知事夫人から州内の幼児教育プログラムについて講義)
ウェストミンスター Cleo Wallace Center
(情緒障害児のための治療・教育施設)
デンバー Asian Pacific Development Center
(アジア系移民・難民のためのサービスセンター)
Warren Village(単親家庭のための自立援助機関)
ゴールデン Lookout Mountain Youth Service Center
(非行青少年矯正施設)
オーロラ Developmental Pathways Inc.
(発達障害者とその家族のための援助機関)
デンバー Mr.Eusebio & Ms.Kathy Chaparro(里親家庭訪問)
オーロラ Mr.Chuck & Ms. Dee Carr(里親家庭訪問)
モントベロ Mr.Robert & Ms.Mae Wilson(里親家庭訪問)

※報告書に記された順番、名称や内容に準じて記載