第19回

1992年度
ヨーロッパ研修

家庭機能の低下にともない、家族の崩壊、虐待、放任(ネグレクト)など、子どもにとって憂うべき現象が増加していました。第19回研修では、「子どもの権利と家庭機能支援活動を探る」をテーマに、前回研修に続き、児童福祉の面で組織だった体制にあるヨーロッパで、ベルギー、スイス、オーストリア3ヵ国で18ヵ所の視察を行い、児童の権利保護に対する理念、一般家庭の児童養育の傾向、児童虐待・ネグレクトと児童保護制度の実情について学び、福祉の根底にある人間観、児童観等について考えました。参加者は養護施設職員11名と施設長1名、教護院職員4名、母子寮職員3名、乳児院1名、情緒障害児短期治療施設職員2名、厚生省課長補佐 1名の23名で、日程は15日間でした。

子どもの権利と家庭機能支援活動を探る

ヨーロッパは、1980年代後半の東欧革命、1990年の東西ドイツの統合、1991年の新生ロシアの誕生、更にはEC諸国を中心とする欧州連合への動きなど、新時代に向けて大きく歩みつつありました。子どもの問題についても、1989年、「子どもの権利条約」が国連で採択され、グローバルな観点から子どもの権利、保護の促進が図られようとしていました。

1991年12月にいち早く、国連「子どもの権利条約」を批准したベルギーでは、1978年、Eugeen Verhellen(ユージン・フェルハーレン)氏によって設立された「子どもの権利センター」で講義を受ける機会を得ました。(写真は講義後の記念撮影)。
講義の一部内容は次の通りです。

子ども観には、古い子ども観と新しい子ども観がある。
古い子ども観は、「社会は、大人の活動舞台」として子どもを半人前として扱い、子どもに権利があっても主張する力がないと決めつけるもので、子どもは大人なしで社会的な存在にはなり得ない。新しい子ども観は、子どもを大人と同じ権利を持つ固有の存在と捉えるもので、この価値観のもとでは子どもは大人と同じように社会の出来事への関係者として資格を持つ。
こうした子ども観に関する研究が、1959年の国連決議「子どもの権利に関する宣言」につながったが、この宣言は法的な効力を伴わなかった。権利は、実体化され履行されなければ、意味がない。
古い子ども観では「あんな親ならいない方がまし」「親子分離が望ましい」などと方向づけてしまいがちだが、新しい子ども観では、こうした局面で、子どもの意見表明権と自己決定権の行使を認めて優先させ、「あんな親」でも子どもが望めばそれを認め、子どもも含めた家庭と家庭を取り巻く地域や関係者へのケアへと目を向けさせる。1959年の宣言以来の取り組みが、子どもの実体的権利を保障した1989年の「国連子どもの権利条約」として実を結んだが、そこに内包する考え方は社会においてはまだ支配的ではなく、新旧の子ども観のせめぎ合いと混乱の中にある。

訪問国 訪問地 視察先
ベルギー ブリュッセル Kind&Gezin(チャイルド&ファミリー本部)
(フランダース地方児童家庭福祉政府機関)
ウォルランド王立養護学校
(難聴児のための特別ケア・サービス、保育所)
アントワープ スタッベ母子福祉センター(母と子の収容施設)
Child Abuse Aid Center of Antwerp
(児童虐待防止相談センター)
ベルラール Kinderland(子どもの国)(大舎制養護施設)
ゲント ゲント大学「子どもの権利研究センター」
スイス ヴェーデンスヴィル ビュール子どもの家(学校併設の精神薄弱児施設)
チューリッヒ シェンクンク・ダッペルズ
(職業訓練所併設の男子教護施設)
チューリッヒ州青少年福祉部(行政機関)
ヴィンタートゥール オーバー・タワー・センター
(世代間交流促進のための住宅と教育プログラムセンター)
オーストリア ヒンターブリュール SOS子どもの村ヴィナーヴァルト(養護施設)
SOS子どもの村治療教育センター
(ウィーン大学医学部治療室)
ガントラムスドルフ SOS子どもの村青少年援助センター(小舎制教護ホーム)
ウィーン ユリウス・タンドラー・ホーム
(15歳未満の短期保護施設)
家庭と青少年環境省(連邦行政機関)
市営子どもの町(大型養護施設)
母と子のホーム(若年母子の寮)
ピンカフェルト SOS子どもの村ブルゲンランド(養護施設)

※おおよそ訪問順に、報告書に記された名称・表現で記載