INTERVIEWインタビュー

河尻 恵 様

児童自立支援施設 国立武蔵野学院 院長/第30回(2004年度)資生堂児童福祉海外研修修了者(カナダ)・記事作成日:2022年10月

海外研修で得た知識や経験が現在の仕事に生かされています

――海外研修に参加されましたが、どのような研修だったのでしょうか。

平成16年度にカナダのブリティッシュコロンビア州のバンクーバーとビクトリアを中心に、さまざまな児童福祉の機関を約2週間かけて視察しました。参加した理由は、国立きぬ川学院という児童自立支援施設で平成元年から16年まで異動がなくずっと働いていたので、もっと外の世界を見てみたい、自分の視野や考え方を広げたいという問題意識を持っていたからです。

――研修でのエピソードやご自身の学びになったことを教えて下さい。

カナダの先住民族の子どもを支援するほとんどの機関に先住民族のスタッフがいて、独自の文化で私たちを迎えてくれました。「子どものために、国は違えどもお互い一緒に頑張っていきましょう」というメッセージをもらうなど、皆さんとの出会いと交流が強く印象に残っています。研修で学びとなったことは、先住民族のケアがコミュニティーベースで行われ、地域や民族ごとに子どもをしっかり見ていくという考え方でした。また、カナダでは里親養育を社会的養護の中心にしていることも知りました。参加した団員がそれぞれ違う種別(職業や立場など)だったので、さまざまな角度や見方から議論ができたことも勉強になりました。

――研修の経験がその後の仕事に生かされていることはありますか。

海外研修の2年後に、厚生労働省の社会的養護を担当する部署に異動しました。まさに日本の子ども福祉の政策に関わるセクションで、海外研修で得られたものが仕事の中に生かされたことがいくつもありました。現在は国立武蔵野学院の院長を務めていますが、子どものケアだけでなく人材育成も担っており、研修などを行うときに何を発信できたらいいのか、何を学んでもらえたらいいのかを考える際に、海外研修で得た経験や知識が参考になることが多く、今の仕事にも生かされていると思います。

――これから資生堂子ども財団にどのような役割を期待しますか。

海外研修は継続してほしいですね。これまで多くの国を対象に研修を実施してきたと思いますが、訪問する国を選ぶときに資生堂子ども財団が詳細な情報収集を行い、今どの国が日本にとって学ぶべき国なのかをリサーチされています。一つの民間の機関がそこまで調べ、研修という形で実際に学びに行き、その結果をとりまとめて発信まで行うようなところは他にないですよね。とても貴重な経験となるこの海外研修はぜひ続けていただきたいです。

――これまでの資生堂子ども財団の成果に対する評価をお聞かせください。

海外研修を経験したOBの方々には、現場の中心となって活躍している方が非常に数多くいらっしゃいます。これらの方々にとって、海外研修がさまざまな面で大きな転機となったことは間違いなく、非常に広い視野で社会的養護や子ども福祉の仕事に取り組んだり、学ぶ機会をずっと持ち続けようとする意識を若い世代に伝えています。資生堂子ども財団の活動が若い世代を育て、さらにそれが子どもたちの幸せに繋がっているのではないかと思っています。

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